申告漏れや脱税の境界線

本来支払うべき税金を誤魔化して高額の利益を得る。
そんな事件をテレビやインターネットのニュースで見た方は多いと思います。

しかし、事件によって「脱税」や「所得隠し」など表現が分かれていることがあります。
この違いはなんでしょうか。

「申告漏れ」・「所得隠し」・「脱税」の違い

有名人などは税金を誤魔化した場合、ニュースでよく使われる表現としては「申告漏れ」・「所得隠し」・「脱税」があります。

これらは納税という義務を正しく遂行しなかった場合に使われる言葉ですが、実は、法や規則などに基づいて明確に定義されているわけではありません
どれに分類されるかは、税務当局の判断次第になりますが、ある程度の境界はあります。

①申告漏れ
単純な税額計算の間違いや経費計上のミスが原因で、納税額を少なく申告したり、無申告にしてしまうケースを指します。端的にいうと経理処理のミスなので、そこに税金を意図的に低く抑えようとするという悪意はありません。

②所得隠し
申告および納税額が本来よりも少ない点は、申告漏れと同じです。しかし、所得隠しは「税額を抑えようという目的」のために、売上を低くしたり、使っていない費用を経費計上する等、意図的な行為を指します。悪意を持って行う以上、申告漏れよりも重いペナルティが課されることになります。

③脱税
所得隠しと同じように、隠蔽・改ざんなど違法な手段を用いて納税額の一部もしくは全部を納めないようにする行為です。悪質性が高いものは、検察庁に告発され、刑事罰の対象になる場合もあります。

このように見てみると、申告漏れと所得隠しの境界線は「意図的かどうか」。
所得隠しと脱税は「悪質性の高さ」に違いがあります。

ただ、意図的かどうかは、当人や関係者しかわからない情報なので明確に分けることはできません。
そのため、どちらに分類されるのかは、税務当局の最終判断ということになるわけです。

また、申告漏れの指摘を受けた場合、ペナルティとして過少申告加算税や延滞税が課されますが、仮装・隠蔽を図ったと判断された場合は、過少申告加算税に代えて重加算税が課せられます

なお、メディアでは主に、税務調査により指摘を受けた所得金額を「申告漏れ」、申告漏れのうち重加算税が課せられた部分を「所得隠し」、国税局が検察庁に告発したケースを「脱税」として、報道しているのではないかと思われます。

受けるペナルティーの違い

「申告漏れ」・「所得隠し」・「脱税」については、受けるペナルティーも違ってきます。

申告漏れについては、本来支払うべき税金を申告・納付していないことから、以下の「加算税」と「延滞税」が徴収されます。

  • 過少申告加算税…申告したものの、申告額が本来よりも少なかった場合に課税される加算税。
  • 無申告加算税…申告期限までに申告をしなかった場合に課税される加算税。
  • 延滞税…納付期限までに税金を納めていない場合に課税される。

所得隠しと脱税は意図的であることにより、申告漏れより遥かに重いペナルティーとなります。

  • 重加算税…納税を意図的に偽装・隠蔽した場合に課税される。本来支払うべき税額の35%から40%の高額の追徴となる。

脱税の場合には、検察庁に告発され、刑事罰の対象になる場合もあります。

まとめ

申告漏れや脱税については、明確に定義分けがされているわけではありませんが、「意図的かどうか」「悪質さのレベル」によって税務署側が判断しています。

もし、過去の申告内容に不安がある場合や無申告状態を続けている場合は、すぐに税理士に相談することをお勧めします。


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